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顕微鏡で比較。200万円時計と10万円時計の違い

高い時計だから正確?安い時計だから防水性が低い?

もちろん否!

特に機械式時計は、価格と性能が比例関係にないことは、時計好きならほとんどの人が認識している。

ここでいう「性能」とは正確な時を刻む=精度であったり、より高い水圧に耐え得る=防水性などの「通常使用で求められる性能」を指すが、時計にそれ以上を求めない(時計好きでない)人から見れば、「どうしてこの時計はこうも高いのか?」「こっちの安いのと何が違うのか?」ということは分かりにくい。

しかし、時計好きであったとしても、それを聞かれた時にうまく説明できないのではないか?

今回は、その答えについて、全てを語れるつもりはないが、その一部をできるだけ客観的にお示ししたい。

本題に入り、今回は正規の定価ベースで、7万7千円の時計と231万円の時計を比べ、両者のどこに価格分の「差」があるのかを探ってみる。

まず7万7千円の時計は、先日買った、日本の良心SEIKOアルピニストSBDC137(購入記録&レビューはこちら)、※画像は後継のSBDC119

そして、231万円の時計は、世界最古の時計ブランドの、世界最古の市販ダイバーウォッチ。ブランパンのフィフティファゾムス・グランデデイト5050 12B30 B52A(ブランパンの不運で波乱万丈な歴史はこちら



私が、手持ちの時計からどうしてこの2本を選んだのか?それは、価格差が大きいことが主。実は、同じコンセプト?のSEIKOアルピニストとロレックスのエクスプローラーⅠ(214270)を比較したかった。

しかし、今回はムーブメントにもスポットを当てたいことから、裏蓋を開ける必要のないバックスケルトンの2本を比べるのが手っ取り早いというのが正直な理由。いつかSEIKOとロレックスを徹底的に比べてみたいとは思うが、時計文字盤が結露してから無駄に裏蓋を開けたくはないのも本音。

より違いを明確にお示しするため、通常のカメラではなく、Amazonで4,000円程度で売られているデジタル顕微鏡を使い、通常のカメラでは見出せない差異を意識して撮ってみた。


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最初にお断りしておくが、今回どちらかが優っているとか劣っているとかを言いたいわけではない。互いの時計においてコストはどこにかけられているのかを探り、価格差の根拠をメーカーに代わりお示ししたいので、その点はあらかじめご了承いただきたい。

価格差30倍も電子顕微鏡で見れば納得!?

結論から言うと、見える範囲にあるパーツひとつひとつに、明かな違いがある。フィフティファゾムスのキャリバー6918Bは名門フレデリックピゲ(今ではブランパンの一部)製でパーツ点数は261個。もちろんその全てを確認できるわけではないが、バックスケルトンからデジタル顕微鏡を介して観察すると、SEIKOとの役220万円の価格差も徐々に納得でき始めた。

具体的にどこが違うのかは、最後に記載。

何枚か比較写真をできるだけ比較しやすい箇所ごとに掲載。

上がSEIKOで下がブランパン

ちなみにどちらも新品購入後、オーバーホール未実施で裏蓋を開けたことはないので、使用頻度(ブランパン断続的3年、SEIKO継続的数週間)こそ違えど、概ね各メーカーから出荷された状態と考えていい。



ムーブメントの違い

しばらく写真のみでお付き合いください。

ラウンド1

ラウンド2

ラウンド3

ラウンド4

ラウンド5



外装の違い

まだしばらく写真だけが続きます。

ラウンド1

ラウンド2

ラウンド3

ラウンド4

ラウンド5

明かに見える「違い」

価格差はちょうど30倍なので、同じ質感なら逆におかしい。それを踏まえても明かに違う。そもそもが違う。

具体的に何が違うか、それは、ブランパンは

パーツ1点1点に注ぎ込まれた妥協なき拘りと、惜しみなく掛けられた時間や人の手

が、感じられる。

もちろん元々この2本、素材、パーツ点数、複雑機構、防水性などに差があるが、その辺りを一旦無視しても、そこには価格差を納得させる差異があった。

もう少し具体的に、ブランパンは

  • 表面の金属のきめ細かさと均一性がある
  • パーツ側面までしっかり処理されている
  • エッジや境界が鮮明
  • 余計な傷が無く、慎重なパーツ管理と組み上げがうかがえる
  • 見えない部分までしっかり処理してある
  • 眺めていたくなる美しさがある

今回表面から確認できていない、ムーブメントを構成する部品(全部で261個)に同様の処理を施しているのであれば、この価格も納得できるし、決してブランド価値を全面に高額な価格設定をしているものではないことが理解できる。

一方SEIKOは

  • 表面処理が粗く、均一性がない
  • パーツの側面の処理が甘い(バリ感残る)
  • ポリッシュとサテンの境界が不鮮明な箇所がある
  • よく見るとパーツに傷がある(パーツ管理時か組み上げ時に付いた傷と推測)
  • 見えない部分は処理を甘くし、コストダウンを図っている
  • 肉眼でも粗さが確認できる(もう少し頑張ってほしい)

逆にSEIKOは安さの理由が垣間見えてしまった。それでもコスパが良くて、信頼性も高くいい時計であることは間違いないが、目の肥えた時計好きを納得させられる逸品とは言えないようだ。価格や立ち位置を考えれば当たり前か・・・

理解できる人には価格以上の価値がある

今回の結果を踏まえても依然、普通に考えれば価格差が理解しにくいのかもしれない。

「え!?それだけで220万円も違うの?」という人もいるだろう。(そうゆう人はそもそも、この記事のここ地点まで到達していないだろうが。)

実際に、5万円アップルウォッチを持ってすれば、「性能」はブランパンを大きく凌駕し、ステイタス性もそれなりにカバーしてしまう。女子ウケもブランパンより良いかもしれない。

なので、そう大して正確でもない、他人からも理解されない時計に230万円を払うことは、多くの人には理解できないだろう。

しかし、未だに私は、5万円のアップルウォッチより、人の手が261個の部品をせっせ磨き、慎重に組み上げられたムーブメントを乗せた、世界初の市販ダイバーズウォッチとして、誕生して2023年に70周年を迎える230万円のブランパン・フィフティファゾムスの方が「コスパがいい」と信じている。



ABOUT ME
CI-369
高校生の時に図書館で「男の一流品図鑑」を見たことがきっかけとなり、以時計収集の趣味に目覚める。これまで所有した機械式腕時計は100本以上。

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