ブランパンってどんな時計?
ブランパンという時計の認知度は高くはなく、知っている時点で時計好きとして認定しちゃいます。
最近は少し増えましたが、以前はネット上でも情報は決して多くはなく、「ブランパン」って検索すると「パンのブランパン」が出てくる…それじゃないって!
では、ブランパンの生い立ちや歴史など他とはちょっと違う視点を見ていきましょう。
①世界最古のマニュファクチュール…しかし
スイスのジュラ山脈のヴィルレという場所で創業者ジャンジャックブランパンが創業しました。
なんと創業は1735年!日本では徳川吉宗がまだ現役の8代将軍だったことで、あの有名な時代劇、暴れん坊将軍が悪代官をとっちめていた?頃です。
そう、ブランパンの最大の特徴、それは「現存する世界最古の時計製造ブランド」なのです。しかしこの「世界最古」という謳い文句に「ちょっと待った!」を唱える方がお見えのようです。
なんと、もう一つ「現存する世界最古」を名乗る時計ブランドがあるのです。さてなんでしょう?
画像はそのブランドの創業者の方です。
これがわかったら、超上級の時計好きに認定しちゃいます。
では、正解です…
1755年に創業した「バシュロンコンスタンタン」です!そうあの世界三大時計であるバシュロンです。
でもちょっと待って。バシュロンは1755年創業ってことは、プランパンが1735年創業だから、ブランパンの方が20年も前じゃん!って思いますよね。
その通りで、確かにブランパンはバシュロンより20年前に創業されたことは間違いなさそうですが、ブランパンにはちょっと言いたくないであろう「過去」があります。
②ブランパンの休眠期間ともう一つの世界最古ブランドの誕生
1735年に創業したブランパンですが、1970年代のある事象によりなんと休眠に追い込まれます。そのブランパンを休眠に追い込んだ事象とは…またまた上級者問題です。
そう、1970年代に起きたクオーツショックです。なんと日本のセイコー(SEIKO)が世界で初めてクオーツを開発し、世界中に爆発的に普及したことにより機械式時計が窮地に追い込まれたあのクオーツショックです。
日本代表のセイコーは、きっと世界の時計メーカーから恨まれてもいるでしょうが、感謝もされていると思います。セイコーが起こしたクオーツショックを乗り越え機械式時計産業が発展し、今日の機械式時計ブームに拍車をかけたことも事実であり、時計界におけるセイコーの功罪は大きいのです。
話は戻って、クオーツショックに加え、代々続いてきたブランパン一族による経営が途絶えてしまったことも重なり、ブランパンは約十数年時計を生産できない休眠状態に追い込まれてしまったのです。
この休眠期間が「世界最古」を謳うブランパンにとっては、結果として大きな痛手となったのですが、一度も休眠していないバシュロンにとっては逆に好機となったに違いありません。
バシュロンは、HPでも。
”途切れることのない歴史”
という意味深なタイトルで、
”260年以上に渡って、ヴァシュロン・コンスタンタンは高級時計製造の技術を高め、作り変えてきました。1755年から現在に至るまで、ジャン・マルク・ヴァシュロンから彼の優秀な末裔たちに至るまで、メゾンの伝説はさまざまな逸話や重要な出来事によって作られてきました。”
と続けています。
「途切れることのない」とブランパンの休眠期間を意識した?キャッチフレーズを全面に使っているとしか思えませんね。
ですので、「世界最古の時計ブランド」は2つあることになっています。
・事実上世界最古=ブランパン
・一度も途切れていない世界最古=バシュロンコンシュタンタン
となるわけで、堕ちていくブランパンの世界最古の座をバシュロンは正に虎視眈々(コシタンタン…コンシュタンタン)と狙っていた?のです。「山田くーん、座布団2枚持ってきて!」
③復活と新生ブランパンの誓いシックスマターピース
休眠していたブランパンは1982年にフレデリック・ピゲというムーブメント製造会社に買収されたことを機にして、当時オメガで敏腕を振るっていたジャンクロードビーバーなどの力添えにより復活していきます。
そこからムーブメント開発など少しづつ力を蓄え、1991年に創業した年に因んだ「1735」というとんでもない複雑機構(グランド・コンプリケーション)の時計を発表し世界を驚かせるとともに、完全復活を世に知らしめたのです。
1992年には世界最大の時計グループであるスウォッチグループの傘下となり、市場に安定した供給ができるようになりました。
これらの復活劇は、ブランパンの復活だけではなく、世界の機械式時計がクオーツショックを乗り越えた象徴的な出来事であり感動すら覚えます。
完全復活したブランパンは、復活を機にいくつかの誓いを立てます。
1、機械式時計しか作らない。しかもケースの形は円形のみ。
ブランパンを窮地に追い込んだクオーツによほど深い恨みをもているのでしょう。(冗談です)1735年の創業以来機械式時計と作り続けた伝統を持つブランパンはクオーツは一切作らず、機械式時計のみを生産しています。
しかも、作成する時計は円形のみで、スクエア(四角)やオクタゴン(八角形)、トノー型(樽型)など円形意外の形の時計は作っていません。
2、シックスマスターピース(直訳:6つの傑作)の作成を推し進める。
シックスマスターピースとはなんでしょう、ブランパンのいう6つの傑作時計を順に見ていきましょう。
①ムーンフェイズ
月の満ち欠けがわかる機構
②永久カレンダー(パーペチュアルカレンダー)
月や日付を表す機能に月末の30日、31日だけでなく、うるう年まで調整不要な機構を加えたもの。
デジタルウォッチなら当たり前ですが、ゼンマイ時計で作るとめちゃくちゃ高い技術が必要で制作も非常に大変であることから機械式時計の「三大機構」のひとつとされています。
③スプリットセコンドクロノグラ
同時に2つの時間を測れるストップウォッチ、デジタル時計でいうところのラップタイムみたいなものです。三大機構ではないけど、こちらもすごい技術であることは確か。
私の持っている2019年のカタログには載っていませんでしたが、ホームページにはありました。クロノグラフの秒針が2本あるのがわかると思います。
④ミニッツリピーター
音色の異なるベルの組み合わせで時を知らせる機構で、元々は暗闇でも時がわかることを目的に開発された機構。
確かに1000円のチープカシオでも暗闇でバックライトが点くけど、この機構は職人技と伝統工芸技術の結晶であり、「三大機構」のひとつ。
YOUTUBE(コチラ)で見たら時計好き出なくとも感動します。だって電池もIC回路もない、ゼンマイと歯車などの原始的動力だけでこれをやっちゃうんですから。
⑤トゥールピヨン
機械式時計の宿命である「姿勢差」=装着者の腕の位置(姿勢)が変わることで各時計パーツにかかる重力位置の変化によって時計の精度にばらつきが出てしまうことを姿勢差と言います。
これを、テンプと呼ばれる時計の精度を司るパーツが、従来持つ往復運動に加え、自ら回転運動をする機構を付加することで、テンプにかかる重力方向を均一に分散し、そのことで精度を少しでも良くしようとしたなんとも、こだわりすぎの機構。
だって電波時計という技術がありながら、ゼンマイ時計でも究極の精度を追い求める、まさに職人魂の結晶なのです。こちらも複雑すぎかつ誰でも作れる機構でないことから「三大機構」のひとつ。YOUTUBE(コチラ)で見れますが、このすごさはマニアックでわかりにくいです。
⑥ウルトラスリム(ウルトラプレート)
極薄の自動巻を作っちゃうこと。現行(UltraPlate)では薄さ8.7mmまで薄くなった。極薄の自動巻時計 自動巻としてはかなり薄いです。ローター(振り子)がある自動巻をここまで薄くすることは高度な設計と技術が必要になります。
これらのように、新生ブランパンは自動巻しか作らないことや、シックスマスターピースの積極的な作成など相当なこだわりを持っていることがわかります。かつては世界五大時計の一つとされた(今は6番手か7番手?)ブランパンだけあって高い技術はもちろん崇高な理念を持つブランドであることがお分かりいただけたと思います。
④代表作
次にブランパンの代表作の紹介です。とにかく同モデル内に多くのバリエーションを持つブランパン、全バリエーションまで紹介していては、多分僕の身がもたないので、ざっくりと代表作のみにしときます。
①ヴィルレ
創業の地であるヴィルレの名前を冠したエレガントなモデル。
薄さを売りにした、ウルトラプレートや複雑機構を搭載したものまで、バリエーションがとにかく多い。
そのせいで価格は税込価格は90万円台から5,500万円まで同じヴィルレでも幅がかなり広いです。
スーツやフォーマルにはドンピシャな時計ですが、スーツをほとんど着ない私には少々ハードルが高めです。
②フィフティファゾムス
私がブランパンを知るきっかけにもなった、世界最古の市販ダイバーズウォッチのデビューは1953年とロレックスサブマリーナと同年のデビューですが、実際にはフィフティファゾムスが数ヶ月早かった説が濃厚。ペットネームの由来は、潜水業界で使われていた深度の単位=ファゾムスで換算して50ファゾムス(1ファゾムス=約1.83m。50ファゾムスは50×1.83≒ 91m)の防水性能を持ち合わすことから。他のダイバーズウォッチに先駆け「回転ベゼル」を採用し、そのごは各国の軍がこのフィフティファゾムスをこぞって採用したガチのダイバーズウォッチなのです。
③レマン
こちらは現在絶版となっていますが、私が個人的に推しているので、紹介させていただきます。
ブランパン生誕の地ヴィルレから南の方にある巨大な湖、レマン湖に因んで名付けられた時計、ヴィルレよりはスポーティかつカジュアルですが、フィフティーファゾムスよりはエレガントな印象で、個人的にはロレックスのエクスプローラーⅠ的な位置付けをしています。
しかしそこはやはりブランパンといったところで、フライバッククロノグラフやトゥールビヨンなど複雑な機構を搭載したモデルも存在します。ただ中古相場はお買い得で現実的な値段なもの少なくありません。絶版ですし、いい物件に巡り合えば購入を検討したいと思っています。
最後に 結局ブランパンってどんなブランド?
これまでのことをまとめると、ブランパンは、
- ①世界最古の時計マニュファクチュールであるが、休眠期間がある。
- ②機械式時計しかも円形時計しか作らない。
- ③超複雑機構も作れる技術力と職人魂がある。(シックスマスターピース)
- ④モデル数は少ないが、モデル内バリエーションが多い。
- ⑤有名人の愛用者は少ない?くらい比較的マニアックなブランド
- ⑥機械式時計復活の象徴的ブランド
- ⑦要所要所で運が悪い。
ということになります。
私も昨年ブランパンのフィフティーファゾムス(チタンのビッグデイト)を多くの時計を売却して購入しました。まだ約一年間しか使用していないですが、その感想は、
大きさの割に大きく感じず、大きさの割に軽く着用感も良好、裏スケから美しいムーブメントを鑑賞することができ、防水性能も高く満足しています。なんといっても条件付き世界最古の都系ブランドの世界最古の市販ダイバーズが私の腕にあると考えると正直ワクワクします。スナックのお姉さんにはわかってもらえませんが、いいんです。
不満は特にありませんが、定価が200万円近くするのに実勢価格は120万円程度で、リセールバリューはあまり見込めないことくらいでしょうか。若い頃から憧れやっと手に入れた時計なので末長く大切にはしていきたいと思っていますので、そこは大丈夫な予定ですが…悪癖が出てしまったら多少後悔するのかもしれません。
以上最後までご覧いただきありがとうございました。ロレックスやパテックのノーチラス、アクアノート、APロイヤルオークがこれだけ入手困難な状況である中、正常な価格で買うことができる時計に一旦目をむけてみるのも、意外な発見があったり、自身の食わず嫌いを発見できたりと、なかなか楽しいものかもしれません。
引き続き、新しいブログ日々追加していきたいと思いますので、よかったら、引き続きご覧いただけると幸いです。
ブランパンも良いけどやっぱりロレックスが好きという方はロレックスの意外と知らないエピソードもみてくださいね。
[…] ブランパンというブランドについては過去に詳しく書きましたので、コチラをまずお読みください。 […]
[…] ブランパンの歴史についてはこの記事をご覧ください。結構詳しく書いてます。 […]