今回は、腕時計の裏蓋についてです。時計を購入する際にどのくらいの人が裏蓋の構造までを気にするかは分かりませんが、私はかなり気になる・重視する部分なのです。

裏蓋の種類を大きく分けると、①スクリューバック ②スナップバック ③ビス留めバック ですが、④一部に裏蓋の無いケースと一体型の時計も存在します。(ダイバーズウォッチに多いです。)
構造別裏蓋のそれぞれの特徴
次に時計の裏蓋の構造ごとの、メリットやデメリットについてですが、他のサイトなどでも特集はされていますので、ここでは深くは触れませんが、簡単にまとめると次のようなものになりまする。
1 スクリューバックの○と✖︎
○:①防水性 ②耐衝撃性 ✖︎:①厚みがでる ②円形のみ(デザインの制約)
最大のメリットは防水性です。ほとんどのダイバーズウォッチにはスクリューバックが使用されています。個人的には、メンテナンスに伴う時計(ケース)への負担が少ないことも隠れたメリットだと思っています。しかし、ねじ込み部分があり、どうしてもある程度厚みが出てしまったり、スクエア型のムーブメントには不向きになります。
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2 スナップバックの○と✖︎
○:薄くできる ✖︎:①開ける際に変形するリスクや、固着するリスク ②防水性はそこまで高くできない。
ドレスウォッチなど、薄さや見た目のエレガントさにこだわる時計には、今でも使われる方式です。ただ開ける際に傷がつきやすかったり、ケース・裏蓋が変形したり、長年開けていないと固着していたりと少々気を使う部分があることも確かです。

3 ビス留めバックの○と✖︎
○:デザインに自由度を与えられる ✖︎:①防水性はそこまで高くできない。
スクエアなデザインの時計やムーブメントには、この方式が選択される場合が多いです。デザインに自由度を与えられることが、最大の特徴です。防水性はビスの太さなどにもある程度依存しますが、いずれにしてもそこまで期待できません。

私がおすすめする裏蓋は・・・
私が一番おすすめしたい裏蓋は、おすすめ順に
スクリューバック>ビス留めバック>スナップバック となります。その理由ですが、
【スクリューバック】個人的には、円形の時計であればこれ一択と言ってもいいと思います。もちろん、一概にスクリューバックと言っても、メーカーごとの設計やコストの掛け方に差はありますが、ある一定以上のメーカであれば、防水性、防塵性、堅牢性、信頼性ともにこの構造が一番優れているように感じています。そこまで厚みが気にならないのであれば、スクリューバックをおすすめしたいです。

実家から出てきた祖父が使っていたCASIO(スクリューバック)の時計を、分解してみたことがあるのですが、外観は、隙間に土や汚れがかなり付着していて、中にも錆の発生や、泥汚れの侵入が予想されたのですが、開けて見たところ、全く錆や汚れが見られず少々驚きました。やはり安価な時計であってもスクリューバックの威力は絶大だと感じました。

もう一つ、構造上裏蓋が大きなネジのようにケースと固定されることから、裏蓋を閉めるとき、開ける時にも高いトルクをかけやすいです。掛けられるトルクは高く、開ける際には比較的容易かつ時計自体に負担を掛けずに開けることができることも、スクリューバックのメリットです。つまり、何度メンテナンスをしても時計が劣化しにくいのです。
【ビス留めバック】スナップバックのようにメンテナンス時に傷をつけたり、変形を招いたりする恐れがない部分は優れていますが、ビス自体が錆びて回らなくなることや、ねじ山が潰れてしまわないように注意する必要はあります。個人的には防水性をあまり求めず、円形でない時計であれば選択します。

【スナップバック】正直一番積極的に選択しない方式です。中古時計で裏蓋が開けられたことがあるスナップバックの時計は高確率で、開けた際についた傷が見受けられることがあります。場合によっては、ケースや裏蓋に変形が見られるものもあります。これは、構造上、金属製の器具をにて「テコの原理」を用いて開けなければならないからです。
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ただ、裏蓋を開ける際の傷や変形は、開ける人の技術・技量によるところが大きいです。先般OHしたIWCの時計は、出したお店がよかったので、ケースと裏蓋は無傷で、中も綺麗になって帰ってきました。(しかも料金も格安)なので、メンテナンスに出す先の信頼性も特に大事になってきます。
防水性についても信頼性はあまり高くありません。アンティークではあったけど、特に酷使された形跡のないIWCでも中にサビが発生していました。構造上、パッキンが劣化すると水が侵入しやすくなるみたいです。

私の結論
それは、薄さに特にこだわりがなく、円形であればスクリューバックを積極的に選びたい。
ということになります。薄さに関して、手持ちの時計を2本測定して見たところ、
- SEIKO SARX047・・・約12mm(自動巻、スクリューバック、10気圧防水)
- nomos キャンパス・・・約9mm(手巻き、スクリューバック、10気圧防水)

でした。一般的に自動巻の薄型と言われる時計は10mm以下です。しかし、自動巻の薄型だと、高確率でスナップバックです。測定結果の通り、特に薄型でない時計でも薄型と3mmほどしか変わらないことになりますし、手巻きであればスクリューバックでも十分薄いことが分かります。
なので、スナップバックとスクリューバックを迷うのであれば、スクリューバックを選んでいただきたいと個人的には思うのです。
しかし、極めてエレガントな時計が欲しく、汗をかいたり、水に濡れることがないような使用方法であれば、スナップバックを選択してもいいとは思いますが、メンテナンスを依頼する先だけは、信頼のおけるところを選択されることをお勧めします。
